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最高裁判所第三小法廷 昭和32年(オ)1150号 判決

主文

原判決を破棄し、本件を広島高等裁判所に差し戻す。

理由

上告代理人多田紀の上告理由第三点について。

原判決(その引用する第一審判決)は、上告人らは昭和三〇年一二月分以降被上告人が本件家屋賃貸借解除の意思表示をした昭和三一年一一月一四日迄本件賃料(一ケ月金二、〇〇〇円、毎月末日払の約)を支払わなかつたこと、なお、上告人らは昭和二九年一〇月分当時から本件賃料の支払を遅滞したことがあり、昭和三〇年二月分からは特にそれが著しかつた事実を認定し、かかる場合は賃貸借解除の前提としての催告は必ずしも必要としないと解すべきであるから、被上告人のした本件家屋賃貸借解除の意思表示は催告を要せずして有効であると判示しているのである。

しかし、右原判決確定のごとき事実関係の下においても、民法五四一条により賃貸借契約を解除するには、他に特段の事情の存しない限り、なお、同条所定の催告を必要とするものと解するのが相当である。

しからば、原判決が、その確定のごとき事実関係を基礎として、被上告人のした本件賃貸借解除の意思表示は催告を要せずして有効であると判断したのは、民法五四一条の解釈を誤つたものというべく、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。

よつて、爾余の論旨に対する判断を省略し、民訴四〇七条一項に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 河村又介 裁判官 島 保 裁判官 垂水克己 裁判官 高橋潔 裁判官 石坂修一)

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